メンズの革靴はハマればはまる程、泥沼にハマっていくような深い底なしの魅力が詰まったジャンルです。
私も革靴が好きなのでこれまで靴に何万円とつぎ込んできましたが、今日はその中でも革靴の中で異質な魅力を放っており、革靴好きなら避けて通ることは不可能ともいえる「コードバン」のレザーシューズについてお話ししようと思います。
コードバンの靴は最高級なのか?
コードバンの靴が最高であるかを話す前に、まず簡単にコードバンという革の事を説明しておきましょう。
コードバンとは何か?
コードバンとは農耕馬のおケツ部分からわずかにしか取れない革の層の事で、熟練の職人さんが革を削ってコードバンに仕上げていくそうです。馬一頭から最悪取れない事もあるぐらい貴重なパーツらしく、当たり前の話ですが、農業用機械が普及して農耕馬自体の数が減ってきている現代、必然的にコードバンの採れる量も昔に比べ年々減ってきており、希少価値が高騰し価格が上がっている傾向があります。今では超貴重な革として靴好きから憧れられる存在となってますし、コードバンの靴をオーダーしても順番待ちで中々入荷してこないぐらいです。
ちなみにコードバンを作っているタンナーさんはアメリカと日本に1社づつしかないらしく、世界で2か所でしか作っていない為、生産が需要に追い付いていないというのが現状らしいです。
コードバンの靴の値段
私が昔服屋さんで働いていたころに買ったときは、ALDENというアメリカのブランドのコードバンの短靴で、値段は10万いかないぐらいでした。そこから5年以上たった今、同じモデルでも国内での価格は10万オーバーに値上がっています。当時と為替レートが変わっているのも原因かもしれませんが。
ちなみに、ALDENというブランドを日本で買う場合は、日本にあるラコタハウスという正規販売代理店を通して購入する事になると思うのですが、その場合中間マージンプラス、関税で本国で購入するよりずいぶん値段が上乗せされています。
これをもし、アメリカで買った場合は関税がかかっていない分安いというのも知っておくとよいでしょう。
よく、ハワイ旅行に行った靴好きの方が、現地でALDENを買ってくる。という話を聞きますよね。うらやましい。
というわけで、コードバンの靴は間違いなく革靴の中で現在、最高級ランクのグレードであることは間違いないと思います。
コードバンのメリットは何か?
続いて、コードバンの革を使った靴のメリット(魅力)をお話ししようと思います。
まずはなんと言っても、「この革、濡れてるんじゃないの?」と勘違いするほどにテッカテカに光った革の表情ですね。これは他の革には中々真似できないポイントで、鏡面磨きというつま先を鏡のようにワックスの層を作って光らせる方法がありますが、それとは根本的に異なる原理で光っているので、鏡面磨きでは真似できない可動部、シワの部分も光らせる事が出来、靴全体の高級感を演出するのに一役買ってくれています。
そしてもう一つ、こちらもコードバンでしかできないポイントなんですが、それは履いて行った時に現れる履きジワがうねるように深くシワになる革の特性です。ほかの革靴とは明らかに違う滑らかかつ深くえぐれたシワが入るので靴に立体感が生まれ美しい経年変化を見る事が出来ます。この2つのポイントがコードバン最大のメリットと言えるのではないでしょうか?
ちなみに、コードバンはこの後に説明する水への抵抗のなさから繊細で弱い革だと誤解されがちですが、ランドセルに使われるぐらいタフな材質を持っており、一説には牛側の3、4倍の強度を持つとも言われており、イメージとは裏腹に意外とタフな革である事も知っておくとよいでしょう。これによってソールを交換しつつ、大切に履けば人の一生に連れ添ってくれる生涯の相棒になりうる革だという事です。
傷の修復力がある?
ネットで探せば画像が出てきますが、コードバンの革は水牛の角などで上から革を押さえつけるようにこする事で、驚くほど傷が目立たなくなる特性があります。これというのもコードバンがざっくり言うと毛を寝かせて光らせている皮革で、だからこそそのような事が出来る。とどこかで読んだのを覚えています。あいまいな情報ですみませんw
コードバンのデメリットは何か?
それでは次に、コードバンの苦手な事、デメリットについても言及していきましょう。
まず一番大きいと思える欠点は、コードバンの革は水(雨)に濡れると一瞬でテカリが消える。という事です。シミになってしまって取れなくなるから雨の日や降水確率が高い日は履かない。という人がほとんどで、正規取扱店でもそのように商品紹介しているくらいです。神経質でモノを大切にする日本人なのでなおさらでしょう。日本以外の国、海外の人たちがコードバンの靴をどのように扱っているかまでは知りませんが、少なくとも雨の日に好んで履いて良い靴でないことだけは確かです。
防水スプレーで表面に膜を作ることによって、ある程度の水分には耐えられるのですが、雨が本降りで防水スプレーの膜を浸透してしまった場合、濡れてシミになってしまうのは避けられません。その原因として考えられるのは、先ほど上にも書きましたがコードバンの革質が垂直に立った繊維を横に抑えて光沢を出しているかららしいのです。雨に濡れることで寝ていた繊維が立ってしまいそこだけ色が違って見える。というのがその現象だと。どこかに書いてありました。(何年も前に見た記事なので曖昧で申し訳ないです)これを根本から防ぐ手立ては私が知る限りありませんので。やはり雨の日は履かない。という革靴の基本理念に立ち返るしかなさそうですね(^^;)
となると、基本的に年間を通して降雨日が多い日本にはコードバンの靴は合ってないのでしょうか?特に北海道や東北、北陸など日本海側は夏は梅雨や夕立、冬は雨や雪が多いですから常に天気予報を確認しながら着用しなければなりませんし、それが不便に感じる方はコードバンは合っていないと思います。実用的な靴とは言えませんから、無理せずカーフやカウレザーを選んだ方がよほど快適に履けるでしょう。
テカリ過ぎて葬儀には不向き
結婚式には大丈夫だと思いますが、基本的に服装のマナーとしてお葬式などの法事にはテカリのある靴は不向きとされていますので、フォーマルシューズとしては万能とは言えません。確かに靴としてのグレードは高いと思いますが、それ=どこに履いて行ってもOKという意味ではないと思うので、その辺のTPOは意識した方がいいかもしれません。そういう意味で、冠婚葬祭全てに対応できるドレスシューズをお探しであれば、カーフのプレーントゥもしくはストレートチップを買った方がいいと思います。
[ジャランスリウァヤ] CAP TOE 98321 BLACK UK 6.5(25 cm)
とにかくコードバンは普通の革より考える事ややることが多いので、めんどくさがりには向いてないかもしれませんね。
コードバンの手入れはどうするのがベスト?
一般的にコードバンのメンテナンス、シューケアーで言われていることを参考までに書いておくと、
- 硬い豚毛ブラシはNG =表面に傷をつけてしまう、寝かせている繊維が起きてしまうので、馬毛のやわらかいブラシで短くブラッシングするとよい。水牛の角で押さえるようにマッサージする。
- 油分の高いオイルもNG =ミンクオイルなど油分を多量に含むオイル類は革を柔らかくしすぎてしまい耐久性を落としてしまうため使わず、乳化性のクリームを使用するのがベスト。そもそも雨の日に履かなければ、そこまで油分が革から抜けることがないのでこれでも十分でしょう。
コードバンの靴と言えばALDEN
最後に、これまで説明してきた良いも悪いも他とは違ったコードバンの革ならではの特徴を存分に活かした伝統工芸品とも言える靴のブランドを紹介します。
それは「ALDEN(オールデン)」です。オールデンはアメリカのミドルボロウという場所で1884年に生まれたブランドですので、かれこれ130年以上も続いている歴史ある靴の会社なんです。世界に2社しか現存していないコードバンのタンナーのうちの1社であるホーウィン社から提供される貴重なコードバンの革を使って仕上げられた靴は、アパレル界では超が付くほど有名な存在となっており、コードバンの魅力もさることながら、その独特なフォルムで作られるオールデンならではのアメリカンなラスト(木型)は見るだけでもとてもかっこよくて惹かれるし、購入して履いてからも履き心地の良さにハマってしまう事でしょう。私もALDENの靴は2足持ってますが、とても足に合っていて履きやすいですし、値段は高かったですが、思い切ってコードバンの革を買ってよかったな。と靴のメンテナンスをするたびに思いますよ。これほどまでに購入後に買ってよかったと思わせてくれる靴、洋服は他には中々ないと思うほどです。それはやはりコードバンの革がなせるこの世に2つとない経年変化から来るのだと私は思います。
まとめ
というわけで、情報をまとめますと
- コードバンの靴は最高級
- 雨が多い日本には適正とは言えないかもしれない
- 手入れが面倒な方にはおすすめしない
- 他にはない最高の輝きがある
- コードバンの革靴で有名なブランドはALDEN(オールデン)
という事でした。コードバンいいですよー!